ジョルジュ・ルオーは19~20世紀に活躍したフランスの画家です。
原色を用いた強烈な色彩と、激しいタッチで野獣派として知られていますが、ルオー本人は、ひたすら自己の芸術を追求した孤高の画家です。
ジョルジュ・ルオーは自身の作品に大変なこだわりを持っており、一度仕上げた作品に対し加筆を繰り返したり、納得できない作品は世に出さず焼却する、といった画家として高いプライドをもっていました。
彼の作品は、キリストや社会的地位が低かった娼婦・道化師などを題材にした物が多く見られます。
ルオーにとって、道化師は「個を消した人間の象徴」「没個性の象徴」だったのではないでしょうか。傷ついた道化師を描いた1932年は、ヨーロッパではドイツ総選挙でナチス党が圧勝した年です。日本では、満州国の建国宣言、五・一五事件での犬養毅首相が殺害されるなど、まさに帝国主義が世界を席巻していた時期でした。
このような世界の状況を見て、自分を見失っていく人間の様を道化師に例え、描いたのかもしれません。